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2014/07/30

ブラジルワールドカップ・観戦記

Tweet ThisSend to Facebook | by:y.uejima

ブラジルW杯・観戦記

                                                小西のぼる


スタジアム

 

RA東京の「ホームページ」に寄稿する機会をいただき、ありがとうございます。

ブラジルW杯に関する皆様の興味からして、当然ながら、決勝戦のリッツォーリ審判団の活躍ぶりをルポしたいところですが、正直に言いますと、審判チームの動きはほとんど記憶にありません。個人的な紀行文として、読み流していただければ幸いです。

とはいえ、少しだけ審判団の感想を。

大会前に「FIFA審判合宿」を行ってきた故なのでしょうが、どの審判チームも「よく統率された動き、システマチックな手順を実践しているな!」と、見ていて感じました。

特にFK時の壁のコントロールは、やるべきことの段取り、スプレーの使い方まで皆同じでした。そして、後方でボールを回している時は、どの主審も前方のかなり高い位置を取っていたのが印象的。ですから、日本対コロンビア戦で長谷部がパスミスしてコロンビアのチャンスになったりすると、プロエンサ主審は大慌てで長い距離をスプリントしました。スプリントといえば、どの審判も素晴らしい走りだったと思います。どしゃぶりでピッチがぬかるんでいようが、高温・多湿・かんかん照りの気象条件だろうが、それぞれの日ごろの鍛錬ぶりが伺えました。

一方で、判定基準については各主審の違いが出たように思います。試合の中で判定がぶれることはないものの、主審によって懲戒罰の基準が違う点は、これからも議論を呼ぶでしょう。

brazil

スタジアムを背にしての記念ショット
 
  ◇  ◇


祭りの熱狂度合いが高ければ高いほど、そのあとの寂寥感、虚脱感もまた激しいものです。

ドイツ優勝から一夜明けて、ホテルの窓からコルコバードの丘のキリスト像を眺めながら、「あんなすごい試合を見た後に、これから一体どんな試合を見ようって言うのか?もう、Jリーグも日本代表戦も見る気がしないんじゃなかろうか!」と、すごく落ち込みました。まるで、自分の人生の楽しみがすべて奪われたみたいな心境でした。

ブラジルW杯・観戦二度目の旅程は二泊六日。試合の翌日は、すぐに空港に向かいました。途中の高速道路から、コンクリートの観客スタンドが見えてきました。鳥栖スタジアムのような、傾斜のきつい見やすそうなスタジアム。しかし、四方を囲むはずの観客席が、なぜか二方面(タッチライン沿い)しかなく、しかもその観客席が1キロ以上も続いているのです。「そうか、これはカーニバル用だ」。リオのカーニバルが、両側から挟まれた観客席の間を何キロにもわたって練り歩くことは知っていましたが、てっきり仮設スタンドだと思い込んでいました。「常設だったとは!」。だだっ広い敷地に、一年に一度しか使わない設備を堂々と持っているブラジルは、正に熱い国。熱い人々で満ちているのです。

ふと、決勝戦の前夜のことを思い出しました。ドイツに完膚なきまでに叩きのめされ、オランダの控えにもいいようにあしらわれた三位決定戦後の夜、ブラジル人たちは陽気に(でも控え目に)飲んでいました。「今日の試合は悲しいよ(エーンと泣いているポーズ付き)。でも明日はドイツを応援だ」と、語り合ってもいました。切り替えが早いというのか、サッカーそのものを楽しんでいるというのか、私は複雑な思いに駆られました……。

空港に着いて、ドイツ人男性とひとしきり話し込みました。彼は、「4年後のモスクワで、日本とドイツが決勝で対戦すると素晴らしいね」と語りました。ただでさえ落ち込んでいた私は、「そんなの不可能!」と即答。すると彼は、「何言ってるんだい。スポーツでは何だって可能さ。Auf Sport, allesist möglich.」と、熱い口調で切り返しました。その言葉に、私の頭を覆っていた、うつの感情が一辺に吹き払われたような気がしました。「そう、何事も可能。よし、今週末はFC東京の応援だ」──。

 

   ◇  ◇

時はさかのぼって、ブラジルW杯・観戦一度目。日本対コロンビア戦のためにサンパウロに向かう機内で、カリフォルニアに住むメキシコ人と、開幕戦のPK判定の話題になりました。彼は、フレッジの倒れ方について、「サッカーには、ドラマの要素がある」と。また、審判の判断の違いについて、「サッカーは人生だよ」と語ってくれました。

「サッカーは人生」、「何事も可能」。この二つの言葉をあらためてかみしめながら、あらためてサッカーファミリーの一員であることの喜びを感じています。サッカーを通じて知り合えた多くの皆様のおかげで、今の自分があることの幸せを大切にしたいと思います。

最後に、ブラジル国内の治安等について少し触れます。

リオの街中は、10台一組の白バイがツーリングよろしく、何組も走り回っていました。警官だけではなく、マシンガンを持った軍人も多く見かけました。地下鉄マラカナン駅の出口では、チケット所持のチェックがありました。これは、ダフ屋対策としては相当有効です。なぜなら、ブラジルに入国した数万人の各国サポーターは、チケットなど持たずにスタジアムの周辺で入手しようとするからです。

結局、南アフリカ大会と同様に、命を落としたサポーターはいなかったと思います。マスコミは、治安の悪さを必要以上に喧伝したのではないでしょうか。前回も今回のW杯も、日本のサポーターの少なさには残念の一語です。「もっと多くの人にW杯の素晴らしさに触れてもらいたい、自国チームを応援してもらいたい」と、痛感せざるを得ませんでした。町並み

写真:マラカナンスタジアムに隣接するスラム街(Favela)。麻薬・銃
犯罪の巣窟なので、「絶対に近づくな」と旅行者に警告されて
いる地域。小奇麗なフットサル場があり、少年たちが遊んでいま
した。この子たちはTVで決勝戦を見たのでしょうか......。

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