IBSA Blind Football EuropeanChampionships 2015 大会レポート
R.A.TOKYO理事 吉田豊宏
8月22日〜29日で行われました IBSA ブラインドサッカーヨーロッパ選手権 2015 に「日本ブラインドサッカー協会」から審判員として派遣され研修して参りました。
ブラインドサッカーとは、ブラインドサッカー(B1クラス)とロービジョンフットサル(B2/B3クラス)という二つのカテゴリーがあります。どちらも、視覚障がい者が安全にプレーできるためのしっかりとした競技規則に支えられています。
ロービジョンフットサル(B2/B3クラス)では、アイマスクを装着しません。弱視者は弱視状態のままで、ほとんどフットサルと変わらない競技規則でプレーします。弱視者のため、ピッチの色と異なる色のフットサルボールを用います。障がいの程度によって見え方の異なる競技者同士がプレーする難しさがありますが、障がいによる制約の少ない非常に魅力があるカテゴリーです。
ブラインドサッカー(B1クラス)はアイマスクを装着し、健常者が情報の8割を得ているという視覚を奪いながらも、驚くほど巧みなプレーをする競技者がいます。
2004年からパラリンピックの正式種目となっています。
フットサルと同じで40m×20mの長方形のピッチで行われます。ボールには特殊な鈴が入っており「シャカシャカ」という音がします。試合は、アイマスクを装着したフィールドプレーヤー4名と晴眼者のゴールキーパーの5名からなる2チームによって行われます。
ゴールキーパーは、ゴールを守ることはもちろん、音声情報を頼りにするフィールドプレーヤーへ声のコーチングをすることも大切な役割で、守備側競技者に対し声で指示をします。また、ゴールキーパーは動くことのできる範囲が非常に狭く、限られています。ゴールキーパーエリアは5、16m×2mしかなく、ゴールキーパーはその枠から出ることが許されていません。例えば、ゴールキーパーエリアの前10cmにボールが止まっていても、エリア外のボールに触れた時点でファウルとなり相手チームにペナルティーキックが与えられます。
ブラインドサッカーではボールがタッチラインを割ることがないよう、両タッチライン上に約1mの高さのフェンスが並びます。スムーズなプレーを促すことに加え、競技者が安全にプレーしたり、ピッチの大きさを把握したりするのに役立てています。また、戦術としてフェンスを活用することができます。
ピッチ横には監督がいます。監督は、一般的な監督の役割に加え、フィールドプレーヤーにフェンスの脇から声でコーチングすることが求められます。コーチングの範囲はフィールドを三分割したときのミドルエリアになります。
攻めるゴールの後ろにはガイドがいます。攻撃する側のゴールの裏のガイドエリアに立ち、ボールを持った競技者に対してコーチングします。ゴールの位置を知らせるときに使われる「ゴール、ゴール」と連呼する声に加え、「6m、45度、シュート」といったようにゴールまでの距離、角度などを競技者に伝えます。そのため、フィールドプレーヤーとガイドの絶妙なコンビネーションが求められます。また、ペナルティーキック、第2ペナルティーキック、または、直接ゴールを狙えるフリーキックではゴールポストを叩いてゴールの位置、大きさを伝えシュートさせ得点を狙います。
担当する範囲も破線で指定され、それぞれピッチを自陣ディフェンスエリア、ミドルエリア、オフェンスエリアと分割し、ボールのあるエリアにいる競技者だけに声のコーチングが許されています。このエリア以外でそれぞれが声をだすと競技者はボールの鈴の音が聞こえなくなるためです。自分のエリア以外でコーチングしたゴールキーパー、ガイドは警告されます。そして、ブラインドサッカーでは違反を犯した監督も警告されます。
フィールドプレーヤーは、視力の差を公平にするためにアイパッチを付けアイマスクを装着します。守備側競技者は、ボールを持った相手競技者に対し「ボイ」と声を出すことが義務付けられています。これは、お互いにブラインド状態のままでは、ボールを持った相手競技者の位置はボールの鈴の音で把握できても、守備側競技者の位置は把握できないため、危険な接触を防ぐための競技規則です。この「ボイ」を発しないとノースピーキングというファウルになります。「ボイ」とは、スペイン語で「いくぞ」という意味です。また、頭を下げてのプレー、スライディングタックルも危険ですので反則となります。
今回私が派遣されたヨーロッパ選手権はリオ五輪のヨーロッパ代表決定戦を兼ねており、スペイン、フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、ポーランド、ギリシャ、ロシア、トルコ、開催国のイングランドの10ヶ国で2グループ5ヶ国の総当たり戦の後、順位決定戦で2ヶ国がリオ行きの切符を手にする事となります。
大会の2日まえの20日に審判団が各国から12名(アルゼンチン 1、フランス 1、ドイツ 1、ベルギー 1、ロシア 1、日本 1、イングランド 6)が集合し、先ずは、大会全体のミーティングを行いました。
翌日、21日には朝食後全員で競技規則の確認を第1条から行い途中ジムでトレーニング、昼食後、競技規則の残りの確認、ビデオでの審判のポジションの確認及びファウル、警告や退場となるファウルの確認、その後ウォーミングアップピッチで実践形式のポジショニング、シグナルの確認、大会のピッチ、ゴール、タイマーの確認そしてミーティングで翌日のアポイントメントと、1日中全員で行動し大会に向け備えます。
22日、朝のミーティングでアイパッチの付け方の確認。そして、試合に臨みました。
私は、初日4試合観戦研修で、2日目以降副審のアポイントをいただき、1日2試合副審、2試合観戦と5日間行い、最終日3位決定戦の副審のアポイントをいただき決勝戦を観戦し、大会中7日間で11試合の副審を務めました。
この大会の審判研修で気づいた事は、各審判員はスピードもさる事ながらより良いポジションでゲームをコントロールしているところです。その背景は毎日の試合後のミーティングにあると思います。
その日の試合の反省、その反省を次の日の試合にどう活かすか話し合います。競技規則を見ながらのミーティングはスムーズな試合運びのために有効であり、とても良い勉強になりました。日々、競技規則の確認をすると共に、ポジショニングの確認も行われました。さらに、各自空いている時間はジムでトレーニングを行っていました。
このように各審判員のブラインドサッカーへの取り組み方、姿勢は見習う事が多かったです。
この素晴らしい経験を自分自身これからの審判活動に活かして行きたいと思いました。
3位決定戦 イングランドvsスペイン のラインナップ。(審判団左端が筆者)