カタールW杯2022観戦記
小西のぼる
<対ドイツ戦勝利>
私がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに向けて成田空港から飛び立ったのは、11/23、22時。
そう、日本vsドイツ戦のキックオフと同時でした。
ライブで観られないのは仕方ないと観念していました。
ところが、エミレーツ航空ではBBC-TVの生放送を提供しているのです。
離陸して巡航高度に達したころ、ちょうどドイツが2点目を取ったところからライブ映像を見ることができました。
「前半で2点差か。」と半ば諦めかけましたが、VARで得点が取り消されたものの、半ばあきらめムード。
ところが後半になると日本チームのリズムががぜん良くなります。
そして勝利の瞬間には、機内中から歓声と拍手が沸き起こりました。
就寝中の乗客がいるにも関わらず!私も隣のインド人とハイタッチ。
これもまた貴重な体験です。
ドバイに到着して、空港や地下鉄の車内で見知らぬ人々から次々に
「日本は、素晴らしい」「おめでとう」と声を掛けられました。
ドイツに勝利するという衝撃が世界中に与えたことを、肌身で実感することになりました。
日本代表が、ドイツやスペインから逆転勝ちをおさめるなんて、
やはりフットボールでは何でも有り得ると教えてくれた
8年前のドイツ人の言葉をあらためてかみしめています。
(このブログの6ページ目あたり、2014/07/30の私のW杯観戦記も、ご覧ください。)
<イスラムで開催する意義>
私はいつも、組み合わせ抽選後にチケットを購入しています。
前回まではこの方法でも、希望する試合が容易に購入できていました。
ところが今回は、チケット売り切れが続出。
ドイツ戦、スペイン戦が入手できず、コスタリカ戦のみとなってしまいました。
「どうしてそんなに人気なのだろう?」と訝しかったのですが、現地に行って納得できました。
出場国のサウジ、チュニジア、モロッコから大勢のサポーターが来ているのはもちろんのこと、
出場していない国々からも多くの人々が来ていました。
北アフリカから中近東、南アジア、東南アジア、これらの地域はすべてイスラムの地域です。
カタールでは、すべての地下鉄の駅に礼拝所が設けられています。
また、禁酒ですから、比較的治安も良い。
例えば、夜のファンフェスティバル会場
(https://www.youtube.com/watch?v=URdV1kPn1CI#msdynttrid=pNk9w4tUXQf4ge5IrAk0137x6EYiXtbTaVXLiwWURJY )には多くの家族連れが訪れていました。
ベビーカーを押しながら家族団らんの場になっていたのも、酔っ払いにからまれることがないからでしょう。
そして、ハラル認証食品。ハラルとはイスラム教徒が守るべき生活全般の規則です。
非イスラム国でハラル認証の食事をするのは、相当苦労しますが、
カタールなら例えマクドナルドでもハラル認証食品を提供していますので、
イスラム教徒にとってはとても気安く旅行ができます。
経済発展著しいカタールは憧れの海外旅行先なのでしょう。
イスラム地域に「W杯」という商品を売り込むマーケティング戦略は、成功したと言えるのではないでしょうか。
サウジvsアルゼンチン、チュニジアvsフランス、モロッコvsベルギー、イランvsウェールズでの「番狂わせ」は、
ホームゲームの雰囲気を作り上げたイスラムサポータの力も大きかったと思います。
<アジア>
日本を応援してくれる人たちと、たくさん写真を撮りました。
お国はどちらですか?と尋ねると、インド、ネパール、バングラディシュ、シリア、レバノン、台湾、などなど。
私が「どうして日本を応援するの?」と尋ねると、異口同音に「同じアジアじゃないか!」という答え。
ドイツに勝利した事も日本人気を後押ししたかも知れませんが、かの国の人たちから日本が慕われているのは嬉しい限り。
自国が出場していなくても、同じ地域の国を応援してくれるサポーターがたくさんいるのが、W杯の魅力です。
しかし我が身を振り返って、恥ずかしながら中近東や南アジアの国々が
日本と同じアジアだ、という仲間意識は全く持っていませんでした。
<禁酒>
大会スポンサーのバドワイザーは、当初スタジアム内でビールを販売するはずでした。
それが、大会二日前の土壇場でひっくり返りました。
舞台裏でどんな攻防があったか知る由もありませんが、
仕方なくノンアルコールビールを販売していました。損害賠償が気になるところ。
アルコールを飲まなくとも、テンションがアップするのがW杯。
禁酒自体はそんなに苦になりませんでした。
最近(12月下旬)、近所のスーパーでバドワイザーのW杯仕様が安売りしているのを見かけました。
世界中で缶ビールが余っているのかも。
<ファンビレッジ>
これまでのどの大会でも、宿泊所(ホテル、民泊、アパートレンタル)のウェブ検索は容易でした。
しかし、今回はまったく見つけられませんでした。
FIFA のエージェンシーが全ての宿泊施設を押さえていたようです。
私は、そのエージェンシーを通じてFan Villageに二泊しました。
Fan Villageとは、皆さんもニュースでお馴染みの悪名高い「仮設プレハブ」です。
人工芝のようなシートが敷かれた砂漠に、約8千戸のプレハブが並ぶさまは壮観です。
駅から徒歩7分あまりで便利は良いです。
しかし突貫工事で作ったのがありありと判る代物。
シャワーは熱いお湯がでたので助かりましたが、お湯が出ない部屋もあったと聞きました。
冷房能力が無いという悪評も報道されましたが、幸い私の部屋については、
真昼間こそ冷房が効きませんが、夕方になれば一応快適に過ごせました。
一方、シャワーやトイレから水漏れがあるし、洗面台の鏡は養生テープで貼り付けていますし、
配管工事の切り屑が散らかっていました。
トイレから漏れている水はどうやら上水だったようですので、
放置しておきましたが、もし下水だったなら不衛生極まりない。
トイレットペーパーが無く、往復10分のカスタマーサービスまで取りに行きました。
仮設プレハブに隣接してディーゼル発電施設があります。
四六時中、低音のうなりをあげていましたし、ディーゼル臭が鼻につきます。
私の部屋は幸い発電施設から離れていましたが、近くの部屋の人たちは不快だったことと思います。
チェックインにかかる時間も相当なもの。
私は40分程度の待ち時間で済みましたが、2時間以上待たされたと言う日本人もいました。
渡された鍵が間違っている日本人には、私が手助けして一緒にクレームつけることもありました。
Fan Villageには、仮設のスーパーマーケット、バイキング形式の食堂、
ケータリング、礼拝所、仮設トイレが用意されています。
仮設トイレは、配管漏れのせいなのか床が水浸しで、これまた不快極まりないものでした。
このように宿泊施設は貧弱で、お金のないサポーターは冷遇されていました。
しかし、ファンビレッジは選手村ならぬサポーター村のようなものですので、サポーター同士の交流は楽しくできました。
また、宿泊者専用のパブリックビューイングは、ありがたい施設でした。
アラブ風の大きな座布団に寝そべって、試合を楽しむことができます。
ただ、日中は強烈な日差しなので、座布団を積み上げて日陰を作らなければなりませんでした。
<あなたもW杯へ>
すばらしい決勝戦を見て、早くも4年後が楽しみな今日この頃です。
ぜひ皆さんもTV観戦だけでなく現地で世界のフットボールファミリーと交流しませんか?
<小西氏自室の鏡の前で>>